#CHOSEN_ONE 渡邊雄太の4年間

ジョージ・ワシントン大時代を振り返る

PART 15  進化を見せた2015-16前半戦

全米24位のシンシナティ大にも

互角の勝負

 

シーズン公式戦2試合目で全米ランキング6位のバージニア大を倒したジョージ・ワシントン大(以下GW)は、開幕から土つかずのまま快進撃を続けます。渡邊選手は第3戦の対サウスフロリダ大戦で7得点にチームハイの4アシスト、続くアーミー(陸軍士官学校)との対戦ではファウルトラブルに苦しみながらもフィールドゴール成功率60%で8得点。そして第5戦ではガードナー・ウェッブ大相手に19得点と、ここまでの自身シーズンハイを記録しました。

この試合での渡邊選手は攻守に存在感を発揮。その中には自身のスティールからのブレイクアウェイで叩き込んだ豪快なスラムダンクのほか、60%の成功率を記録した3Pによる9得点が含まれます(フリースローも6/6100%)。

ここまでチームとしての成績は対バージニア大戦の金星を含む60敗(エキジビションの1試合を除く)。渡邊選手個人としても平均23.6分の出場で9.2得点、1.4アシスト、4.4リバウンド、1.0ブロック、0.8スティール、フィールドゴール成功率42.4%(3P成功率26.3%)で、前年の同時期(平均20分、7.0得点、0.2アシスト、3.4リバウンド、0.6ブロック、0.4スティール)に比べ明らかに進歩がみられます。

調子を高めるGWと渡邊選手がこのあと臨んだのは、バークレイズ・センター・クラシックというインシーズンのミニトーナメントでした。20151127日から28日にかけて開催されたこのトーナメントは、NBAブルックリン・ネッツのホームアリーナであるバークレイズ・センターが舞台。ネブラスカ大、テネシー大とシンシナティ大にGWを加えた4チームでの、ノックアウト方式のトーナメントでした。また、テネシー大はサウスイースタン・カンファレンス、ネブラスカ大はビッグ10カンファレンスという、いずれも伝統的に強豪がしのぎを削るカンファレンスに所属しています。

GWは初戦でテネシー大と対戦し、73-70で勝利。翌日の決勝戦に駒を進めることができました。この試合での渡邊選手は、29分間出場して前試合に続く2桁得点(11得点)に3アシスト、3リバウンド。存在感を十分に示し、勝利に貢献しました。

次に対戦することになったのは、ネブラスカ大を65-61で破ったシンシナティ大。この時点まで60敗で、直前のシーズン第3週(1123日付)の全米ランキングで24位につけていました。当時のロスターを見ると、2018年のNBAドラフトでゴールデンステイト・ウォリアーズから1巡目28位指名を受けたジェイコブ・エバンス(シューティングガード)のほか、同年にドラフト外ながらヒューストン・ロケッツ入りして活躍したゲイリー・クラーク(スモール・フォワード)という、NBAで地盤を固めつつあるプレイヤーの名前が見つかります。もう一人、2017年にGリーグでプロデビューし、2018-19シーズンにオーランド・マジックで4試合に出場したトロイ・クーペイン(ポイントガード)もいました。

格上相手のこの対戦で、GWはロングレンジのシューティングが好調(試合を通じて11/2250%)で、前半を30-27とリードして折り返す健闘を見せます。渡邊選手も3P2本を含む8得点、3アシスト、1リバウンドで、マッチアップ相手のシャック・トーマスを2得点に抑えるなど奮闘。しかし、渡邊選手の1リバウンド、さらにはフロントラインの主砲たるケビン・ラーセンがわずか1得点という数字から想像できるように、チーム全体としてインサイドで苦戦。最終的に56-61の僅差で、このシーズン初の黒星を喫してしまいました。

全米トップ25にランクイン!

そして思わぬ黒星…

2015年12月14日付APランキング21位にはGWの名が(画像クリックでESPNのランキング記事に飛びます)
2015年12月14日付APランキング21位にはGWの名が(画像クリックでESPNのランキング記事に飛びます)

シンシナティ大に敗れたGWは、続く対戦でこれも名門のシートン・ホール大、ペンシルバニア大をホームに迎えます。ここまでのスケジュールは相当強度の高い内容ということができ、チームの強化を進めながら、実際に成果を出すことで評価を高めていく重要な過程だったと言えます。そして、GWはこの2つの対戦にも勝利し、その中で渡邊選手はシートン・ホール大相手に9得点(フィールドゴール成功率66.7%)、5リバウンド、2アシスト、対ペンシルバニア大戦では14得点(同62.5%、3Pでも57.1%)、5リバウンド、3アシストとオールラウンドな活躍を見せました。1212日、さらにラトガース大を83-49の大差で下してシーズン成績が91敗となったあと、GW1214日付AP全米トップ25ランキングの21位に顔を出します。その次のセント・ピーターズ大との一戦も87-74でモノにすると、GWのランクはさらに20位まで上昇。カンファレンス・シーズンを前に、いよいよチームは勢いづきました。

ところがGWは、1222日の対ディポール大戦で、思わぬ落とし穴にはまってしまいます。ディポール大はこの時点まで56敗で、この対戦まで4連敗中の相手。全米ランク20位のGWとしては負けてはいけない相手だったはずです。ところがその格下相手に、GW61-82という21点差の屈辱的な敗北を喫してしまいました。

エースのパトリシオ・ガリーノは3P0/6を含むフィールドゴール0/84得点、司令塔のジョー・マクドナルドもフィールドゴール0/53P0/2)で無得点の上、アシストもゼロで、数字としては彼ら2人が抑え込まれた形です。ケビン・ラーセンが17得点、タイラー・キャバナーが14得点と奮闘し、渡邊選手もフィールドゴール50%(3/6、フリースローは1/1)で7得点を奪ったものの、チームとしてのフィールドゴール成功率は33.3%(17/51)、3P成功率が14.3%(3/21)と低調。このシーズンまでチームを率いていたマイク・ロネガンHCも、「まったく元気がありませんでした。よかったのはラーセンだけですね」と嘆くしかありませんでした。

とはいえ、年内最後のセントラルフロリダ大との試合にも67-50で勝利したGWは、年内の成績を112敗とし、ホリデーシーズンを迎えます。年明けからのアトランティック10カンファレンス公式戦に向け、大きな成果を期待できる状況に変わりはありません。

(Part16に続く)

 

関連リンク

対アーミー戦ハイライト映像(GW Hatchet Video)

対ガードナー・ウェッブ大戦トップ3プレイ映像(渡邊選手のブレイクアウェイ・ダンクがランクイン)(GW公式YouTube RaiseHighTV)

バークレイズ・センター・クラシック1回戦、対テネシー大戦ハイライト(テネシー大公式YouTube)

同ゲームサマリー(ESPN)

バークレイズ・センター・クラシック決勝、対シンシナティ大戦ハイライト(シンシナティ大公式YouTube)

同ゲームサマリー(ESPN)