日本代表、対イラン戦の見どころ

9月13日に行われた対カザフスタン戦、日本代表は85-70と快勝を収めました。この試合で日本は、NBAメンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約を結んだ渡邊雄太選手と、NCAAの強豪ゴンザガ大で主力として活躍する八村 塁選手が初めて同時に出場を果たし、富樫勇樹選手(Bリーグ千葉ジェッツ)、馬場雄大選手(同アルバルク東京)、比江島慎選手(豪NBLブリスベン・ブレッツ)らと共に期待どおりの活躍を見せました。

そして今日、9月17日は東京・大田区総合体育館での対イラン戦。注目の一戦のみどころを自分なりにまとめてみます。

©FIBA
©FIBA

※以下本文では、敬称を略させていただきます。

対イラン戦戦略

最大のカギはディフェンス・リバウンドと、そこからのトランジションオフェンス。イランには、アーサラン・カゼミ・ナエミ(今ワールドカップアジア予選2位の9.9RPG)とハメッド・ハッダディ(同3位の9.6RPG)という強力なリバウンダーがおり、チーム平均45.0本はアジア予選全体の1位。日本の36.0本に比べちょうど9本多いですが、このうち9.2本を稼いでいるハッダディが、今回不在です。このイランに、日本はリバウンドで負けるわけにはいきません。

イランは今回、得点源のモハマド・サマド・ニッカー・バラミ(今大会平均14.4PPG)も欠いた状態。ハッダディ(同13.4PPG)とあわせ、オフェンス面の“1-2パンチ”が不在ということになります。イランはこの大会初戦でイラクに黒星を喫していますが、これもハッダディとバラミが欠場した試合でした。

 

フリオ・ラマス ヘッドコーチは、獲るべきディフェンス・リバウンドを獲り、アーリーオフェンスからどんどん得点し、ハイスコアの展開に持ち込みたいのではないかと思います。

この観点から “海外組”はもちろんなのですが、竹内譲次(Bリーグアルバルク東京)と太田敦也(Bリーグ三遠ネオフェニックス)がカギを握るプレイヤーになりそうです。彼ら自身がリバウンドを獲るのはもちろんすが、チームメイトが獲りやすくなるようなボックスアウトやハッスルを2人が忠実に行えば、それだけ日本の勝利のチャンスが膨らみます。

リバウンドは、一次予選で日本が初戦から4連敗を喫した大きな要因でもありました。ベストの布陣ではないイラン相手に、もしこの項目で十分戦えないならば、もともとワールドカップ出場の資格はないと言わざるを得ません。ここは奮起に期待したいところです。


©FIBA
©FIBA

日本のオフェンス

対カザフスタン戦までの7試合を終えた時点で、日本はグループFにおいて平均得点で2位(79.1PPG。1位はオーストラリアの88.6PPG)。また、直近の3連勝においては、その数字は90.7PPGまで伸びています。

仮にディフェンス・リバウンドがしっかり獲れるようなら、効果的なトランジションオフェンスを展開しやすくなります。そうなれば、アーリーオフェンスから渡邊選手や八村選手、馬場選手のスリー、あるいはダンクが炸裂するシーンが何度もみられるにちがいありません。

必然的に、ハイスコアの展開が日本のゲームプランということになります。各クォーターで20得点以上を確実に奪い、日本のここまでの平均得点を上回る80得点越えの展開なら日本のペースです。

オフェンスのカギを握るプレイヤーは、やはり渡邊、八村の2人。ここに、対カザフスタン戦では3得点にとどまった比江島がどれだけプラスするか。この3人で60得点近くを稼ぐことができれば、スリーもドライブもあるバックコート陣の得点機も増えると思います。

日本のディフェンス

対カザフスタン戦で、日本はマンツーマンと2-3ゾーンをベースにディフェンスを行いましたが、見ていて特徴的と感じたのは、マンツーマンにおける相手のピック&ロールへの対応です。

相手はエースのルスタム・イェルガリに得点機を産み出そうと、たびたび彼にマッチアップした渡邊にスクリーンをかけてきました。イェルガリにボールを持たれた際、渡邊は基本的にピック(オンボール・スクリーン)に対し“オーバー”の動きをし、イェルガリを追いかける意図を持っていたと思います。

これに対し、スクリーナーのディフェンダーは主に、いわゆる“ソフトヘッジ”で、インサイドへの突進を防ぐポジションをとっていました。結果、ボール・ハンドラーがミドルレンジでゴールを奪われていたと思います。

渡邊のディフェンスに定評があるからこそ、ミドルレンジでプレッシャーをかける仕事を渡邊に託したのかもしれません。一度のポゼッションで2度、3度とスクリーンにくるビッグマンとぶつかり合い、相手のエース級のフィニッシュを止めにいく渡邊のプレイは見応えもあります。しかし、エース不在とはいえ格上でサイズもある相手に対し、戦況によりこの“ソフトヘッジ&オーバー”の対応にも変化があるかも…と思います。日本がどんな“意地悪”をするかに注目しても面白いと思います。

Above the rim

今日の試合に最も期待したいのは、これまでの日本代表ではみせたことのない空中戦です。対カザフスタン戦でも何度もありましたが、渡邊、八村、ブラウン、あるいは馬場が一気にかけ上がる速攻の見ごたえはNBAクラスです。ディフェンス面でも、簡単には打たせないブロックショットが日本の特徴になりつつあり、ゴールよりも高い位置、“制空権”を奪う日本代表をぜひとも見たいです。

さらに、バックコート陣が繰り出すもう1つの空中戦――3PTシューティングも見ものです。得点の意識が高い富樫の軽快なプルアップスリー、篠山竜青(Bリーグ川崎プレイブサンダーズ)がドライブからのキックアウトして田中大貴(Bリーグ アルバルク東京)や辻 直人(Bリーグ川崎プレイブサンダーズ)らがスポットアップスリーを決めるシーンをどれだけ見せてくれるか、楽しみです。

©FIBA
©FIBA

結果予想

日本が80点台半ば、イランが70点台半ばというスコアで日本が勝つと予想します。6月の対オーストラリア戦勝利に大きく貢献したニック・ファジーカスの不在は不安材料にならず、逆にスモールラインナップの日本が速攻を連発させて快勝。このシナリオを描いてティップオフを迎えようと思います。