NBA All-Star Weekend 2019 in Charlotte Special Story

シャーロットで会いましょう

31年間の生涯をコートサイドで生き抜いた一人の記者

アーノー・ゲルブとその仲間たちの友情物語

Original title by the arthor: Why All Star Weekend is So Special to Me

Written by Michael Steenstra, Introduction & Translation by Takeshi Shibata

私がバスケットボール雑誌『HOOP』の編集長をしていたころ、取材仲間にアーノー・ゲルブというフランス人の若手記者がいました。ワシントンD.C.を拠点にNBAやNCAAの取材に精を出していた彼は、ワシントン・ウィザーズや、当時渡邊雄太選手が所属したジョージ・ワシントン大、ジョージタウン大などNCAAの強豪チームの取材で活躍していましたが、2016年に突如、31歳の若さでこの世を去ることとなりました。そのアーノーが毎年楽しみにしていたのが、つい先週開催されたNBAオールスター・ウイークエンド。試合やイベント自体のレポートはあふれるほど存在しているので、ここでは今回現地に飛んだマイケル・スティーンストラ氏による、ひと味もふた味も違うオールスター回想を紹介したいと思います。

Read English version [Meet me in Charlotte]

Original title by the arthor: Why All Star Weekend is So Special to Me

Written by Michael Steenstra, Introduction & Translation by Takeshi Shibata

2015年、ニューヨークでのオールスター・ウイークエンド初日に
2015年、ニューヨークでのオールスター・ウイークエンド初日に

フランスのバスケットボール狂

アーノー・ゲルブ

2016年6月28日に31歳で急逝した我が友、アーノー・ゲルブ。彼の死は私にとって非常につらい出来事で、私は彼を思って何度泣いたかわからない。いよいよ親近感を増してきた時点での突然の別れ――私はそれまでに体験したことのない、深い悲しみに沈んだ。

NBAのオフシーズンには、我々は毎週“ハッピーアワー”と称して集まった。理由はわからないが、亡くなる少し前のアーノーは、毎日のように私に電話をくれたものだ。もちろんほとんどの話題はバスケットボール。彼はバスケットボールについてなら、何年でも話していられるほどの知識を持っていた。

私がアーノーと知り合ったのは、2013年に日本のバスケットボール雑誌『HOOP』の仕事で、ワシントン・ウィザーズの取材を始めたときのことだ。アーノーはそれまでに私が出会った中で、最も熱烈で深い知識を持つバスケットボール・ファンだとすぐにわかった。それだけでなく彼は“超いいヤツ”だった――いつも私を助けてくれて、NBAの世界でメディアとして働くのがどんなことかを教えてくれたのが彼だった(訳者注:スティーンストラ氏はワシントンD.C.とメリーランド州周辺の学生スポーツをカバーするメディアで経験を積んでいたが、NBAを取材するようになったのは『HOOP』が初めて)。

アーノーは次々と記事を生み出し、フランスのバスケットボールメディア『BasketUSA』に提供する「コンテンツ・マシーン」だった。試合の日、私が会場の入り口に到着してメディアクレデンシャルをもらうころには、彼はいつも5本程度の記事を仕上げていた。どこへでも入り込んでいく彼を見て、将来はテレビ業界に進むか、フランス版のデイレン・ロヴェル(アーノーが憧れていた著名なスポーツビジネス・レポーター)になるにちがいないと、私は思った。アーノーは31歳になるまでに、私なら一生かかるほどの時間を、バスケットボールに捧げていたと思う。

ウィザーズの試合やNBA関連イベント(ドラフトなど)には必ず行っていたし、NCAAに関しても相当数の会場に足を運んでいた(フランス№1のNCAAレポーターだと私に言わせたかったのかも)。また、年に数回は遠出して、行ったことのないアリーナで取材していた。NBAのアリーナならどこへでも行くのがアーノーだ。

しかし中でも、NBAオールスター・ウイークエンドの会場は、まちがいなく彼の一番のお気に入りだった。アーノーにとっての地上の楽園――それがNBAオールスター・ウイークエンドだった。


2015年のNBAオールスター・ウイークエンドでの1枚左からアーノー・ゲルブ(BasketUSA)、ヘラルド・ロペス(Cultura NBA)と筆者
2015年のNBAオールスター・ウイークエンドでの1枚左からアーノー・ゲルブ(BasketUSA)、ヘラルド・ロペス(Cultura NBA)と筆者