2017-18NBA TOPIC

2017-18ラプターズはなぜ強い!?

後半戦にさしかかったNBA の2017-18シーズンにおいて、3月2日時点でイースタン・カンファレンスのトップを走るトロント・ラプターズ。その指揮官を務めるドウェイン・ケイシーHCは、かつて日本に住み、男女トップチームの指導に携わった経験を持っています。ワシントンD.C.の中心街にあるキャピタルワン・アリーナで同日に行われた、地元ワシントン・ウィザーズとの一戦後、そのケイシーHCに挨拶する機会をいただきました。その会話も参考に、ラプターズ好調の理由を私なりにまとめてみます。

囲み取材を終えたケイシーHC(写真右)は、こちらに気付くと柔らかな笑顔を浮かべて、「はじめまして」と流暢な日本語の挨拶で、自ら会話の口火を切ってくれました。会話の様子も追って公開いたします!

全員で戦うリバウンドとタフなセカンドユニットの存在がカギ

 

今シーズンのラプターズは、カイル・ラウリー、デマー・デローザンら主力の活躍に加え、リーグNo.1と言われるベンチプレイヤーたちの支えが大きな力となっています。イーストは昨秋の開幕当初から、史上最強プレイヤーと言われるレブロン・ジェームスを擁するクリーブランド・キャバリアーズと、若くして秀でた采配が高く評価されているブラッド・スティーブンスHCが率い、リーグ屈指のポイントガード、カイリー・アービングが牽引するボストン・セルティックスを軸に進んできました。

しかし中盤戦から勢いを増したのがケイシーHCのラプターズ。この日のウィザーズ戦も、前半こそ主導権を握られる展開があったものの、第2クォーター半ばからは、C.J.マイルス(この試合20得点)をはじめとした控え陣の活躍で徐々に流れをつかんでいきました。第3クォーター終了時点でスコアはラプターズの77に対しウィザーズが74。一見好勝負なのですが、ベンチの得点に注目すると少し異なる印象となります。この時点で比較すると、ウィザーズの9に対しラプターズは30に達しており、試合終了時点ではラプターズが50-15と圧倒していたのです。

ウィザーズが司令塔でエースのジョン・ウォールを故障で欠いていたこともあり、序盤で主導権を保ちきれなかったウィザーズは、この“ベンチモブ(控えの暴れん坊たち)”の活躍に後半対抗できなくなり、最終的にはラプターズが102-95で勝利を手にしました。層の薄いウィザーズに対しベンチの力で圧倒する流れは、ケイシーHCの構想どおりのラプターズ・バスケットボールであったように思います。

 

この試合で注目したい数字の一つに、両チームのリバウンド数があります。具体的には以下のとおりでした。

1Q TOR7-15WAS

2Q TOR8-11WAS

3Q TOR7-11WAS

4Q TOR12-10WAS

合計 TOR34-47WAS

 

対して得点経過は以下のとおりです。

1Q TOR19-27WAS

2Q TOR32-20WAS

3Q TOR26-27WAS

4Q TOR25-21WAS

合計 TOR102-95WAS

 

リバウンドで圧倒されたにも関わらず、ラプターズは勝つことができました。ワールドカップ予選を戦っている日本代表男子が、オフェンス・リバウンドに精彩を欠く戦いぶりで台湾とフィリピンに続けて敗れたあとでもあり、この点についてケイシーHCに質問させてもらったところ、この試合では五分五分のこぼれ球が多く、ラプターズはそれらにタフに食らいついていたこと、さらに後半にはボックスアウトが前半よりもしっかりでき、さあ来るぞという意識を持って、小柄なガードを含め相手に体をぶつけて戦うことができたから、というような話を聞かせてくれました。 

 

全クォーターのリバウンド総数では圧倒されながら、ケイシーHCのコメントと合致するように、後半だけだとほぼ互角の19-21。また勝負どころの4Qには12-10と相手を上回っています。ラプターズにはこの日リバウンドを5本以上記録したプレイヤーは出場12人中1人だけ(ガードのラウリーの7本)でしたが、逆にゼロだったのも1人だけ。ケイシーHCは「リバウンドは5人でやるものだ」とも話してくれましたが、チームとしてもそれが浸透しているからこその数字だと思えます。

全員が追いかけるリバウンドとベンチモブの存在。スターターの出場時間がラプターズに比べ1.4倍程度も長かったウィザーズ側には、主力のスタミナ切れとそれにともなうメンタルなダメージもあったにちがいありません。コートに立った全員が、ケイシーHCの言葉どおりの戦いをした、あるいは苦境から建て直してそうしようと頑張り続けた成果が、この日のラプターズの勝利なのかもしれません。大変見ごたえのある試合でした。

 

3月2日のワシントン・ウィザーズ対トロント・ラプターズ戦ダイジェスト映像(NBA公式サイトより)

2017-18NBA順位表

 

☆ドウェイン・ケイシーHCのプロフィール

現NBAトロント・ラプターズのヘッドコーチ。2017-18シーズンはオールスター・ゲームでもヘッドコーチを務めた。1989年から94年にかけては日本で生活し、女子の積水化学、男子のいすゞ自動車でヘッドコーチを務めたほか、日本代表男子の指導にも携わった経歴を持つ。

 

Takeshi Shibata

O-Media/Ocean Basketball Club

ワシントンD.C.で開催されたワシントン・ウィザーズ対トロント・ラプターズ戦。会場のキャピタルワン・アリーナには、18,000人を超える観衆が集まっていました。