Fan Zone Special

涙のシニアナイト

シニアナイトの対フォーダム大戦終盤、ご両親が見守る中このフリースローを沈めて31得点目を記録した渡邊雄太選手。会場は大歓声に包まれ、劇的な一夜はクライマックスを迎えました

2月から記しはじめた「#CHOSEN_ONE 渡邊雄太の4年間」はまだまだ気の向くままに続けていきますが、一方では彼がジョージ・ワシントン大コロニアルズ(以下GW)の一員としてプレイする最後のホームゲームが、現地時間2月28日(水)に、同大ホームアリーナ、チャールズE. スミス・センターで開催されました。今回、私はブロガーとしてチームからパスを発行してもらい、現地で取材させてもらいましたので、ここではその様子を紹介します。

 

アメリカのカレッジ・バスケットボールでは、卒業する4年生の最後のホームゲームを伝統的に“シニアナイト”と呼び、それぞれの功績を称える生涯一度の特別な機会にしています。GWの2017-18シーズンには、該当するプレイヤーが渡邊雄太選手のほかにパトリック・スティーブス、ボー・ゼィグラー、ジャック・グランジャーと3人おり、ティップオフ前には場内アナウンスでそれぞれが家族とともにコートに姿を表し、祝福を受けました。GWの主軸である渡邊選手は、その中でも最後に登場。ご両親と一緒に、清々しい笑顔で観衆の声援に応えました。

その日の試合に先だって、渡邊選手については総得点1385(GW歴代18位)、ブロック数140(同4位タイ)、出場試合数130(同3位)という記録が公開されていました。1年生だった2014-15シーズンからの、日本のバスケットボール・プレイヤーとしては前人未到の数々の偉業も思い出されます。2013年春のNCAAトーナメントでファイナル4入りした強豪、ウィチタ州大ショッカーズを相手に戦ったダイヤモンドヘッド・クラシック決勝戦終盤の、勝利を引き寄せたスリーとタフなディフェンスは、世界に“YUTA WATANABE”の名を知らしめました。日本人初のアトランティック10カンファレンス週間最優秀新人賞受賞のニュースは、信じられないような驚きと喜びをもたらしてくれました。同じシーズン、豪快なティップイン・ダンクでESPNの『TOP 10 PLAY』に登場したときには、「こんな時代になったのか」と、映像を見て胸が高鳴ったのを覚えています。翌2015-16シーズンはGW初のNIT(National Invitational Tournament、2016)優勝に大きく貢献し、3年生になった2016-17シーズンには、カンファレンスのオール・ディフェンシブ・チーム入り…。渡邊選手の渡米までは想像さえできなかった輝かしい快挙が、記憶の底から飛び出してきました。

 

日本のメディアからは、渡邊選手を目的として片手では足りない数の取材申請があったそうです。私は基本的に一人旅でしたが、渡邊選手のご家族はもちろん、NBA解説等でお馴染みの島本和彦さんをはじめとした日本からのメディア関係者やファン、あるいはワシントンD.C.在住の日本人の皆さんと交流する機会がかなりあり、大変濃密で意義深い時間を過ごさせていただきました。

 

当日は、まずは散歩がてらGW関連の土産品を仕入れに『GW Campus Store』なるオフィシャルショップに出向き(GWの№12、渡邊選手のジャージーを買ったのはいうまでもありません)、昼食後はシューティング・アラウンドで渡邊選手とチームの様子を確かめました。アリーナに入って早々に、コートに登場した渡邊選手と顔を合わせると、彼は笑顔で「お久しぶりです!」と握手に応じてくれ、リラックスした様子でした。

1時間強続いたこのセッションは、シューティングと対戦相手のフォーダム大を想定したウォークスルーがメイン。メンバーたちはリラックスした雰囲気ではあったものの、コーチからの戦術的な指示は様々な想定の中でのポジションの取り方や動き、目的に関して非常に細かなところまで要求されていました。早口の英語でビシビシ飛び込んでくるコーチの指示に反応しながら、チームの緊迫感はいやがおうにも高まっていきます。

試合直前のウォームアップでは、少なくとも私の目には、渡邊選手がやや緊張していたように感じられました。ミドルショットはいくつもリングに弾かれ、ダンクも一度外し…。 会場にご両親がいて、日本のファンにも後日テレビで放映されるシニアナイト。見ている側は、「無理もないよな…、しかしこれがこのアリーナでは最後の試合。よい結果になりますように…」と祈るような思いで見守るしかありません。

そして先ほど触れた、シニアを祝福するセレモニー、さらには渡邊選手の1000得点を祝す記念ボールのプレゼンテーションを経て、いよいよティップオフです。

試合内容は他の記者の皆さんの素晴らしい記事がすでに公開されていますし、私としても『#CHOSEN_ONE…』でおいおい詳しく振り返ることにします。しかし素晴らしい試合でした。

キャリアハイを更新する31得点。開始直後から積極的に得点を狙うプレイぶりは安心して見ていられるものでした。31得点目に到達した終盤のフリースローでは、様々な思いが胸をよぎったか、渡邊選手の目から涙が溢れました。その後わずかな時間をコート上で過ごし、「ユウタ! ユウタ!」の大合唱とスタンディング・オベーションの中、渡邊選手はベンチに下がりました。

 

試合後のインタビューと会見で、家族や指導者、チームメイトたちなど、支えてくれた周囲に対する感謝を言葉にし、感極まって涙を流した渡邊選手の姿に、こちらも胸が熱くなりました。4年間の努力の積み重ねがいかに厳しい道のりだったかは彼本人にしかわかりません。しかしそのすべてが報われたのかなと信じられる、爽やかで誇らしいシニアナイト。取材した側にとっても、一生忘れられない夜になりました…。

☆渡邊雄太シニアナイト関連リンク(GW公式サイト)

ダイジェスト映像

フォトギャラリー

 

Takeshi Shibata

O-Media/Ocean Basketball Club 

センターコートで祝福を受ける渡邊雄太選手とご両親(左はモーリス・ジョセフHC)

シニアのチームメイトと一緒のセレモニー
シニアのチームメイトと一緒のセレモニー

日本から駆けつけたファンが持参した日の丸で会場は一体感に包まれました

「#CHOSEN_ONE 渡邊雄太の4年間」もぜひお読みください! 


終了間際、コートに下がる渡邊選手とジョセフHCのハグ。スタンドにはご両親の姿もあり、胸が熱くなる場面でした