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渡邊雄太2018-19シーズンのデータ

NBAでは14試合にアクティブ登録

2019年1月14日時点。スタッツはBASKETBALL-REFERENCE(HTTPS://WWW.BASKETBALL-REFERENCE.COM/)で、日本時間2019年1月14日に確認したデータです。

NBAE/Getty Images

アメリカ現地1月12日(土)、日本時間13日(日)の日程を終えた時点で、渡邊雄太選手はメンフィス・グリズリーズの2018-19NBAレギュラーシーズン・ゲームに4試合、その提携下部チームにあたるGリーグのメンフィス・ハッスルで17試合に出場を果たしました。グリズリーズはレギュラーシーズン82試合中の42試合を、ハッスルは同48試合中26試合を消化しており、プレイオフの日程を除けば折り返し地点を回ったばかりということになります。現時点までの渡邊選手のパフォーマンスは、数字上どのような傾向にあるか、振り返ってみます。

 

まず、渡邊選手のNBAでの出場と主な数字は以下のとおりです。

 

2018.10/27 対フェニックス・サンズ戦 出場4分31秒、2得点、2リバウンド

2018.11/14 対ミルウォーキー・バックス戦 出場7分46秒、2リバウンド、1ブロック

2018.12/17 対ゴールデンステイト・ウォリアーズ戦 出場3分58秒 2得点、1リバウンド

2019.01/07 対ニューオリンズ・ペリカンズ戦 出場3分06秒、2得点

 

上記4試合でのアベレージは出場時間4.8分、1.5得点、1.3リバウンド、0.3ブロック、FG成功率は40.0%(2/5、うち3Pは0/2)、FT成功率100%(2/2)でした。このほか、出場できなかったもののベンチ入りを果たした試合が10試合あり、ここまでの全日程42試合のちょうど1/3にチャンスをもらっていたことになります。

NBAでは大騒ぎするような数字はまだありません。しかし、一定以上の信頼を得ているとみて良いのではないでしょうか。また、出場機会を得たときには、積極的にゴールに向かう姿勢がよく出ています。コートビジョンの良さ、しなやかなボディーコントロールとフットワークでマッチアップ相手を追いかけるディフェンスも健在で、もしも10分以上の出場時間を得られたら、数字もついてくるように感じます。

デビュー戦でゴールに向かう渡邊選手。この試合はフリースローで2得点を記録しました
デビュー戦でゴールに向かう渡邊選手。この試合はフリースローで2得点を記録しました

NBAE/Getty Images

ハッスルの歴代記録を塗り替える32得点も

 

一方、ハッスルの一員としては、渡邊選手はコンスタントにコートに立ち、貴重な経験値を得られています。12月7日の対アイオワ・ウルブズ戦で、相手プレイヤーと交錯して脳震盪になり、その後10日間休養を余儀なくされ、その後復帰した経過も含め、今後につながる前向きな体験ととらえられます。

ハッスルで17試合に出場した渡邊選手は、アベレージで主に以下のような数字を残しています。カッコ内は、今シーズンハッスルでプレイした18人中の順位です

 

出場時間: 34.0分(1位)

得点: 12.8(7位)

リバウンド: 7.8(3位)

アシスト: 2.7(5位)

ブロック: 1.1(4位)

FG成功率: 41.7%(14位)

2P成功率: 48.3%(12位)

3P成功率: 29.7%(12位)

ユーセージ%: 16.8%(13位)

 

これらのデータには様々な見方があると思いますが、ここではユーセージ%(「ユーセージ・レート」と呼ばれます)を中心にまとめます。これは、そのプレイヤーがチームオフェンスにどれだけ参加しているかを示すデータで、ある意味では、この数値が高いプレイヤーがそのチームのオフェンスの軸だという見方が成り立ちます。

渡邊選手は、このユーセージ%がチーム内で低いにもかかわらず、チームで一番長い出場時間を得て得点、リバウンド、アシスト、ブロックでまずまずの数字を記録しています。2018年11月21日の対フォートウェイン・マッドアンツ戦では、3Pを10本中6本(FG全体は19本中10本)成功させチーム歴代最高の32得点を記録するなど、爆発力も披露しました(その後チーム記録は、デンバー・ナゲッツと2ウェイ・コントラクトを結んだブランドン・グッドウィンの36得点で塗り替えられました)。

この時点でハッスルの16勝10敗はリーグ3位の成績。平均114.7得点はリーグ27チーム中4位で、逆に失点107.6は下から10番目です。チームとしてのFG成功率が47.5%(リーグ4位)、3P成功率が38.2%(リーグ1位)というデータを見ても、どちらかと言えばオフェンス面の効率の良さが現状の成績につながっていると言えます。

その中で渡邊選手の数字は、オールラウンドな印象。ユーセージ%が低い中で2桁得点を計算でき、得点以外の複数項目でも貢献を見込める戦力です。

数字上の課題を自分なりに挙げれば、このユーセージ%を上げることと言いたくなります。例えば渡邊選手のユーセージ%が、チーム最高の32.1を記録しているジャーネル・ストークス選手(その後グリズリーズからリリース)に近いレベルになることは、シュート機会倍増につながる可能性があります。そうなると実戦でのシュートタッチやリズムがいっそうよくなり、成功率上昇も期待され、結果として得点も増えるでしょう。

今シーズン、ハッスルに所属してグリズリーズでもプレイした208㎝のパワーフォワード、アイヴァン・ラブ選手と渡邊選手を、ユーセージ%を軸にして比較してみましょう。

 

ユーセージ%…渡邊 16.8/ラブ 24.3

FG試投数…渡邊 10.6/ラブ 14.9

FG成功率…渡邊 41.7%(2P 48.3、3P 29.7%)/ラブ 53.8(2P 59.3、3P 34.8%)

平均得点…渡邊 12.8/ラブ 20.7

出場時間…渡邊 34.0/ラブ 31.3

 

コートに立っている時間に比べてシュート機会が少ない渡邊選手に比べ、ラブ選手は4割程度機会が多く、得点は6割以上多く稼いでいます。ユーセージ%を高めるには自身でフィニッシュまで持っていく能力が必要ですが、ラブ選手はシュート力に加えて、1対1からの力強く多彩なフィニッシュが際立っています。まだ21歳と渡邊選手より若いですが、NBAで2017-18シーズンにデビューを果たし、これまでにグリズリーズで50試合に出場した経験(うち今シーズン14試合)が相当大きな自信をもたらしているように感じます。

 

以上、1つの見方としてユーセージ%に着目して、渡邊選手のプロデビューシーズン前半戦を振り返ってみました。ユーセージ%上昇が、必ずしもNBAでの出場機会増加につながるとは限りませんが、今後この数値がどのような変動を見せるか、ハッスルでプレイする際には注目してみると面白いと思います。

ただし、故障が重なり苦戦が続いているグリズリーズでは、スタッツではわからない日常の姿勢やコンディションが評価されて、チャンスが舞い込む可能性も高いと思います。やはりNBAでの渡邊選手を観たいですね!

GリーグはNBAを目指すプレイヤーの修練の場

Gリーグ経験を持つジャレル・マーティン選手とケム・バーチ選手(共にNBAオーランド・マジック)に、その当時を振り返ってコメントをいただいたので、あわせてご覧ください。マーティン選手は2015年にメンフィス・グリズリーズからドラフト指名(1巡目25位)を受けた後、当時グリズリーズが提携していたアイオワ・エナジー(現アイオワ・ウルブズ=ミネソタ・ティンバーウルブズと提携)での体験を話してくれました。また、バーチ選手はGリーグを「世界で3番目にハイレベルなリーグ」と評しています。

彼らの話を聞くと、プロ入り前とは異なる生活環境に慣れ、NBAとGリーグの行き来に慣れ、ハイレベルな戦いの中で自分のリズムを生み出してプレイし続けることの大変さ、大切さが感じられます。


 Takeshi Shibata / O-Media

Interviews by Michael Steenstra