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渡邊雄太、ついにNBAデビュー!!

デビュー戦は2得点、2リバウンド。次の出場機会が楽しみです
デビュー戦は2得点、2リバウンド。次の出場機会が楽しみです

NBAE/Getty Images

ジョージ・ワシントン大で4年間プレイし、この夏NBAメンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約を結んだ渡邊雄太選手が、2018-19NBAレギュラーシーズンの公式戦に初登場。日本のNBAファン、バスケットボール・ファンが待ちに待った瞬間がついにやってきました。

現地2018年10月27日(日本時間28日)、グリズリーズはホームにフェニックス・サンズを迎えて今季5試合目に臨みました。渡邊選手の登場は、グリズリーズが111-86とリードし、サンズがタイムアウトをコールした4Q残り4分31秒。ウェイン・セルデンに代わってコートに入った渡邊選手は、以降試合終了までプレイし、右コーナー付近から鋭いドライブを仕掛けてファウルをもらい、フリースローでNBAキャリア初得点を記録したほか、速攻でアリウープのチャンスも作り出すなど、落ち着いた様子で好プレイを見せました。

試合は117-96でグリズリーズが今季3つ目の白星を手にし、渡邊選手は2得点、2リバウンドでNBAの歴史に足跡を残しました。

これで渡邊選手は、田臥勇太選手(Bリーグ 栃木ブレックス)が2004-05シーズンにサンズの一員として公式戦に出場して以来、14年ぶりのNBAプレイヤー。この日の4分31秒は、日本のバスケットボール史に残る記念すべき快挙であると同時に、渡邊選手自身にとっては、輝かしいキャリアの始まり。ここからのステップアップがさらに楽しみです。

 

渡邊選手のNBAデビューをNBAリーグバスで観戦したあと、何かを書き残したい気持ちがありましたが、うまく思いをまとめることがなかなかできませんでした。様々なレビューがあふれ、新たなニュースが舞い込み続ける中、正直、今もまだ何が残されるべきか、まとめきれてはいません。

4年前、香川県の尽誠学園で初めて渡邊選手のワークアウトを間近に見せていただいたあと、当時携わっていた月刊誌『HOOP』での渡邊選手関連の定期連載を即座に決め、実行しました。

渡邊選手とご家族に接し、高みを目指すひたむきさと謙虚さに感銘し、圧倒的な能力に驚いたからです。そこにはご家族からの導きがあり、それに応えながら夢にまっしぐらに突き進む若者の姿がありました。

あの時以来、渡邊選手のこの日が来ることを疑わなかった立場として、正直、感慨無量の一言です。

渡邊選手のここまでの飛躍の過程は、本人が望むかどうかと無関係に、日本人のバスケットボールにおける可能性を示すという重い任務を背負った道のりとなりました。それは「日本人がNBAに通用するわけがない」という見方を覆す仕事であり、過去の実績を見ても非常に困難なことはまちがいありませんでした。しかしジョージ・ワシントン大(以下GW)時代の4年間に、渡邊選手はその道のりを一歩一歩進んできました。 

GWチームと渡邊選手のご両親(今年3月、渡邊選手のシニアナイト翌日に撮影)
GWチームと渡邊選手のご両親(今年3月、渡邊選手のシニアナイト翌日に撮影)

GW1年生のときには週間最優秀新人賞を2度受賞し、豪快なティップイン・ダンクでESPNのトップ10プレイに登場。全米トップ25ランカーだったウィチタ州大に対する大金星の立役者にもなりました。渡邊選手以前にNCAAディビジョンIで活躍した選手たちへのリスペクトを持ちながら記すべきことですが、日本人が非常に大きなインパクトを残せるということを、これだけの実績で残したのは渡邊選手が初めてだと思います。

2年生のときには、NIT(ポストシーズンのビッグトーナメント)の重要な試合で、相手の最大の得点源だったポイントガードを徹底マークして抑え込み、決勝の対バルパレイソ大戦では4ブロックを記録。最終的にこの大会でチーム史上初の優勝を手にしたGWの躍進に、渡邊選手は欠かせない存在となっていました。NCAAトーナメント、NITというポストシーズンのビッグイベントで、全米制覇のチームに日本人が名を連ねたのはこれが初めてです。

3年生時にはリーダーとしての役割も期待されるようになりました。現在ユタ・ジャズでプレイするタイラー・キャバナーと共にチームの核となって戦ったこのシーズン、GWは最終的に3年連続でポストシーズンの大会(CBI=College Basketball Invitational)への出場権を手にしています。また、渡邊選手は個人として、アトランティック10カンファレンス(以下A10)のオール・ディフェンシブ・チームにも選出されました。

最後の4年目、渡邊選手はキャプテンとしてチームを率い、A10の最優秀ディフェンシブ・プレイヤー賞という勲章も手にし、さらにオール・カンファレンスチーム(サードチーム)にも選出されました。

この夏、GWを卒業したあとは、NBAのサマーリーグ、グローバルキャンプにおいて持ち味のシュートとディフェンス力を披露し、スカウトたちの目を引きました。さらに今秋のワールドカップアジア大陸予選に参加した際には「僕と(八村)塁が戻ってきて負けは許されない」と勝利に向けた強い意志をあらわにし、言葉通り日本代表を2つの勝利に導きました。

これだけの実績を積み上げてNBA入りを目指す渡邊選手の実力に、疑問符をつける理由はありません。「日本人にNBAは無理」という見方は覆されました。

9月17日の日本対イラン戦、フリースローを打つ渡邊選手
9月17日の日本対イラン戦、フリースローを打つ渡邊選手

渡邊選手がこのまま生き残ることができるかどうかはわからない、どうせすぐ消えていく…。まだ、こういうネガティブな見方は残ることでしょう。しかし、一つだけ条件を付ければ、この疑問符は消えてなくなります。

唯一の条件とは、「これまでと同じレベルで研究と練習を積み重ね続ければ」ということだけです。しかしこれは、渡邊選手とご家族にとって得意分野。個人的にはまったく心配していません。

渡邊選手はこの先長くNBAに止まるはずです。そればかりか、近い将来にはプレイオフの舞台でレブロン・ジェームスやステフィン・カリー、ケビン・デュラントといったビッグネームと対峙し、苦しめる時が来るにちがいありません。

日本には「開幕からコールアップはないだろう」、「ガーベッジタイムなら出られるだろう」と謙虚な予想ばかりが目立ちますが、もっと大胆に、渡邊選手の実力に自信を持っていいと思います。おごりやひいき目ということではなく、フェアな視点から見て、今後数年のうちにグリズリーズ、あるいは別のチームで主力の座を手にしている可能性があると思います。アメリカでよく、真摯に練習に取り組む選手やスタッフを「Student of the game」と表現しますが、渡邊選手のここまでの姿勢はまさしくそれでした。これが変わらず続くことが見込まれるし、それが続く限り、渡邊選手はさらにビッグになっていくにちがいありません。

 

この秋、10月に来日した元ポートランド・トレイルブレイザーズのレジェンド、ラリー・スティールさんに、O-Mediaとしてお話しをうかがった際、渡邊選手についてもコメントを得ることができました。シューターとして、そしてNBAの初代スティール王として知られるラリーさんは、似たタイプの“3&Dプレイヤー”とされる渡邊選手へのアドバイスとして「NBAで生き残るには、まず日々の練習の積み重ねができること。これはどんな分野でも同じでしょうね。また、すべての側面で相当うまけなければならないことに加え、1つか2つの側面で、抜きん出た存在になることが必要」と話しました。渡邊選手はデビュー戦後のインタビューで、自身の武器であるシューティングとディフェンスを磨く意欲を見せていました。まさにそれが今後のカギ。どのように渡邊選手が飛躍するか、引き続き見守っていきましょう。 

 

Takeshi Shibata / O-Media