遠すぎる存在。

しかしチームの全員が驚き、悲しんだ…

 

29日の千葉ポートアリーナでは、ジェッツの大野篤史ヘッドコーチが、コービーについてこんな話をしてくれました。「僕は(年齢が)1年しか変わらないので、同世代として大好きなプレイヤーでした。勝ちたいというメンタリティーがすごく好きですし。何でも、いつでも、どこでも勝ちたい、そういうメンタリティーをジェッツにももたらしていけるようにやっていきたいと思います」。

ジェッツの司令塔としてリーダーシップを発揮する富樫勇樹は、悲報に触れツイッターで驚きと悲しみの想いを投稿していましたが、あらためてその思いを話してくれました。「(コービーの)動画とかをよく見ていたし、彼の練習やバスケに対する姿勢を見てきているので、プレイもそうですけど、そういった部分に影響を受けたというか、バスケしている人すべてが学べるところだと思います。バスケにとって本当に大きな存在だったんだと思いました。遠すぎる存在でしたが、(チームでも)全員びっくりして悲しんで…やっぱり衝撃でした。特に、朝起きて(事故のことを)知ったので…」。 

前日連勝が10で途切れた後の試合、富樫は4Q残り48秒に、追いすがる名古屋を引き離す3Pショットを含む15得点、6アシスト、3スティールで勝利に貢献しました


今シーズンからジェッツに加わったコー・フリッピンは、ロサンジェルス・レイカーズの本拠地からほど近い南カリフォルニアのトーレンスという町からやってきた若者です。日本国籍をフリッピンは、コービーをアイドルのように思って育ったそうです。

「コービーは子どもの頃からお気に入りのプレイヤーでした。レイカーズは僕の地元のチームで、通っていた小学校によく来てくれたんですよ。だから小さなときに何度か、コービーに会ったこともあります。よく試合も見に行きましたし、僕のアイドルです。バスケットボールを始めたのも、彼がいたからです」。悲しい知らせに影響されたかと聞くと、「考えるだけでもつらいです。偉大な人を失ったと思いたくありません。彼がしてくれたこと、多くを与えてくれたことに感謝したい、そう捉えています」と答えてくれました。LAっ子ならではの思い出もあるといいます。「小学校低学年の頃にコービーが僕の小学校に来た時には、教室にも入ってきてくれました。3時間ぐらいは一緒だったでしょうか…。そうそう体験できない思い出ですよね」。

 フリッピンは1996年生まれ。くしくもそれはコービーがNBAデビューを果たした年です。まさしくコービーを見て育ったLAっ子が今、日本で活躍の舞台を得て飛躍しようとしている事実は、そのままコービーの大きさを示しているかもしれません。

前日の敗戦では「いいプレイができませんでした」というフリッピンでしたが、この日は厳しいデイフェンスでマッチアップした相手を苦しめる場面が何度もみられました


「世界中のファン」という中には、一般のファンのみならず、各国のトッププレイヤーやコーチたちも含まれています。すでに影響を与えるべき立場に立っている人々から、その人々の背中を見ながらバスケットボールに取り組んでいる人、取り組み始めたばかりの人まで、本当に広い範囲の人々に、コービーの悲劇は影響を及ぼしました。

しばらく時間が過ぎれば悲しみも癒え、いつしか彼に思いを馳せることも少なくなるのかもしれません。それでも、彼の姿勢や功績を忘れるバスケットボール関係者はいないでしょう。マンバ・メンタリティーを思い出して自身の日々の生き方を見つめたくなる日が、何度も訪れる気がします…。

 

 このたびの悲劇的な事故で命を落としたコービー・ブライアントさん、ジアナ・ブライアントさん、ペイトン・チェスターさん、サラ・チェスターさん、アリッサ・アルトベリさん、ジョン・アルトベリさん、ケリ・アルトベリさん、クリスティナ・マウザーさん、アラ・ゾバヤンさんに、あらためて心から哀悼の意を表し、ご冥福をお祈りいたします。

 

Takeshi Shibata / O-Media