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#CHOSEN_ONE 渡邊雄太の4年間

PART 2 NCAA Div.Iデビュー

Photo courtesy of George Washington University Athletic Department     

ジョージ・ワシントン大コロニアルズは、渡邊選手が加わる前の2013-14シーズンにNCAAトーナメント出場を果たしていました。この大会は毎年3月に開催され、全米のスポーツファンを熱狂させることから、“マーチマッドネス(March Madness=3月の狂気)”と呼ばれるビッグイベント。出場には所属カンファレンスの王者になるか、選考委員会推薦を受ける必要があります。その出場権を得たということは、ジョージ・ワシントン大が自他共に認める強豪の一つということです。

当時の2年生(渡邊選手入学時の3年生)にはパトリシオ・ガリーノ選手(現スペインリーグ、バスコニア)、ケビン・ラーセン選手(現デンマークリーグ、ホーセンス・スポーツクラブ)、ジョー・マクドナルド選手(現ジョージ・ワシントン大チームスタッフ)、キーサン・サベージ選手(現NBA Gリーグ、ラプターズ905)という実力者がそろっていました。渡邊選手の立場は、下級生が多いチーム構成でマーチマッドネスに登場し、翌年にはさらに上位進出を狙おうというその強豪チームから、ぜひとも来てほしいと誘われた、というものです。チームが、即戦力として一定以上の期待を持っていたことが明らかでした。コア・フォー(Core Four=核となる4人組)と呼ばれた新3年生の4人組をさらに勇気づける、さらなる新戦力加入という位置づけだったとみるべきでしょう。

渡邊選手にはジョージ・ワシントン大以外に、同じアトランティック10ディビジョンに所属するフォーダム大などからも勧誘の声がかかったそうです。しかし、指揮官のロネガン氏の下、チームとしての一体感が強く、かつメンバーの国際色が豊かで様々な個性を受け入れられる土壌を持つジョージ・ワシントン大が自身の進路にぴったりであると確信。2014年4月16日に入学誓約書を提出したのでした。

強豪に入れば、チーム内の共存も熾烈なもの。しかし、「1年生からスターターになり、NCAAトーナメントに出たい」と話す渡邊選手の言葉からは不安を上回る自信と、ワクワクした思いが伝わってきました。

2014年の初夏に、HOOP誌の仕事でワシントンD.C.のライター、マイケル・スティーンストラ君にロネガンHC(ヘッドコーチ)のインタビューをしてもらった際、指揮官の評価は、①シュートがうまい ②走力がある ③ガードのスキルが高い ④課題はフィジカル面の強化、というものでした。渡邊選手は5月からチームに合流していたので、直近の様子を知るロネガンHCの評価は最も信頼できる情報。しかも大いに期待が膨らむ内容でした。しかし、実戦ではどうなのか…。

それから約半年後、待望のNCAAデビューの日がやって来ます。2014年11月14日、日本人としては4人目のNCAAディビジョンIプレイヤーとして、渡邊選手が公式戦のコートに立ちました。相手はグランブリング州立大。3446人の観客で埋まったホームコート、チャールズE. スミス・センターでのシーズン初戦にベンチスタートで登場した渡邊選手は、20分間の出場で8得点、7リバウンド、1ブロックを記録し、92-40の快勝に貢献しました(6日前の11月8日にはエキジビションの対ブルームバーグ大戦で12得点8リバウンド、3ブロックを記録)。8得点には、ゴール周辺でこぼれ球のティップインあり、ゲーム終盤にポイントガードのポール・ジョーゲンセンとみせたピック&ポップというプレイからの3PTシュートありと、ディビジョンIのレベルでも幅広いプレイを見せられることを証明しました。

 

アメリカに行って何がある? トップレベルでは何もできないことを痛感し、力を出しきれずに終わるだけ。行かない方がいいし、周囲も無責任にすすめるのはどうかと思う...。

渡邊選手が渡米した頃までは、アメリカ挑戦を志すプレイヤーについてのこんなネガティブな発言を、バスケットボール関係者の口から何度も聞いたものでした。かつて日本のトップリーグでコーチとして働き、現在海外の強豪プロチームでコーチをしている人物からも、似たような趣旨のことを聞かされました。

「日本の高校生がアメリカの大学にバスケをするために進学するのは、得策だとは思わない。日本の強化方法でうまくなり、まず国内で勝てるようになってから、NBAを目指したほうがよいと思うよ」

 

ジョージ・ワシントン大での最初の公式戦後、「すごくいい雰囲気の中で、試合を楽しむことができました…。僕が出たときに、観客がユウタ! とコールしてくれたのがすごくうれしかったです」と渡邊選手は笑顔で答えました。そして、前述の競技関係者の言葉とはうらはらに、次の試合以降も渡邊選手の活躍は加速していきます。(Part 3へ続く

 ジョージ・ワシントン大コロニアルズ公式ページリンク

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Takeshi Shibata

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