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#CHOSEN_ONE 渡邊雄太の4年間

PART 3 STATEMENT GAME

2014-15シーズンの第3戦、強豪バージニア大で強烈なブロックを浴びせる渡邊選手
2014-15シーズンの第3戦、強豪バージニア大で強烈なブロックを浴びせる渡邊選手

Photo courtesy of George Washington University Athletic Department     

フレッシュマン(1年生)としてのデビュー当初から、チームに貢献する働きをみせた渡邊選手は、2014年11月21日に行われた公式戦3試合目で、一段レベルのちがうチャレンジに直面します。その時点で全米9位にランクされていた名門バージニア大との対戦です。

バージニア大はアメリカのカレッジ・バスケットボール界で名門の一つとして知られる強豪で、過去にラルフ・サンプソン、オルデン・ポリニス、リック・カーライルほか、数々のNBAプレイヤーを排出しています。渡邊選手が戦った世代のチームにも、後にNBAの2016-17シーズンで新人王に輝いたマルコム・ブログドン(ミルウォーキー・バックス)という素晴らしいプレイヤーがいました。ちなみに現在進行中の2017-18シーズン、バージニア大は3月5日付け全米ランキングでNo.1に座しています。

伝統的強豪相手に敵地に乗り込んで戦ったこの試合は、開幕2連勝で勢いづくジョージ・ワシントン大(以下GW)と渡邊選手のその後を想像する上で、非常に参考になる力試しの機会でした。さて、結果は…。

42-59。勝ったのはバージニア大でした。しかし前半はGWが26-22とリードして折り返しました。また、渡邊選手はチーム2位の10得点で、GWの一員として初めて得点を二桁台にのせてきた上、リバウンドでチームトップの5本を記録。試合後のインタビューでロネガンHCは、「ユウタはよくやっていた」と話し、強豪相手のアウェイゲームという厳しい条件下で上級生たちが苦しむ中、奮闘した渡邊選手の活躍を称えました。「ユウタがトップリバウンダーになるようではいけないね。フレッシュマン頼みになるようなオフェンスでは…」と、上級生の奮起を促すロネガンHCの言葉も印象的でした。

敗れたとはいえ、フレッシュマンの立場でのこのプレイぶりは、渡邊選手にとって自己の存在感を強く周囲に印象づける“ステイトメント・ゲーム”であったにちがいありません。

この敗戦で2勝1敗となったGWは、その後も強豪との対戦機会を次々にこなしていきます。

 

NCAAのバスケットボール・シーズンは、大まかにいえば、11月からのノンカンファレンス・ゲーム、年明け1月からのカンファレンス・ゲーム、3月中旬のカンファレンス・チャンピオンシップ、そして3月下旬から4月上旬にかけてのマーチ・マッドネスという具合に分けることができます。このなかで、秋口からのノンカンファレンス・ゲームについては、各大学が独自に日程を組むことができます。

強化のためにあえて格上とのアウェイゲームを組んだり、興業収入獲得を狙って人気の高いチームをホームコートに招いたり、あるいは別の興業主が強豪を招いて主催するミニトーナメントに参戦したり…。このスケジューリングには、チーム事情により、様々なアプローチが見られます。結果としてある意味、そのチームの強化に向けられた本気度を示すひとつの指標ともいえるものであり、これは新入生の勧誘にも影響を及ぼすチーム運営上の重要事項の一つです。

GWのこのシーズンのスケジューリングは、かなりタフなものと考えられました。先に触れたバージニア大のほかにも、シートンホール大、ペンシルバニア州立大、ディポール大と、バスケットボール・ファンには名の通った強豪との対戦が最初の9試合の中に組み込まれていたからです。つまり、強化に対する本気度は高く、渡邊選手はその過程で勝ちに行くために勧誘された人材だということが、この事実からも確認できました。

GWはこれらの対戦で、ディポール大をホームで81-68で下し、シートンホール大には敗れはしたものの54-58とほぼ互角の戦い。ペンシルバニア州立大には51-64と差をつけられてしまいましたが、他の6試合に全勝。年末に組まれていたハワイでのダイヤモンドヘッド・クラシックというインシーズンのミニトーナメントに、6勝3敗とまずまずの成績で臨むこととなります。実戦でチームプレイに磨きをかけながら、彼らはあきらかに強くなっていきました。

渡邊選手は、シーズン5試合目で対戦したシートンホール大戦で後半残り5分過ぎに貴重な同点3PTシュートを決め、53-56で迎えた終了間際のフリースローの機会には、1本目を冷静に決めたあと、2本目を意図的に外して再度ボール・ポゼッションを保持しようという、強いメンタルも必要とするプレイを実行するなど、チームに貢献しながら有益な経験を積んでいきます。長身とウイングスパン、そして豊富な運動量を生かして相手にプレッシャーをかけるディフェンスは、ロネガンHCの大きな武器であった1-3-1ゾーンにおいて、この頃にはすでに欠かせない要素になりつつありました。(Part4へ続く

 

2014年11月20日の対バージニア大戦関連リンク

http://www.gwsports.com/sports/m-baskbl/recaps/112114aaa.html

 

Takeshi Shibata

 

O-Media/Ocean Basketball Club


2014-15シーズン、対シートンホール大戦でリバウンドを争う渡邊選手
2014-15シーズン、対シートンホール大戦でリバウンドを争う渡邊選手

Photo courtesy of George Washington University Athletic Department