#CHOSEN_ONE 渡邊雄太の4年間

PART 5 ダイヤモンドヘッド・クラシック

Photo courtesy of George Washington University Athletic Department     

ダイヤモンドヘッド・クラシックの初戦は2014年12月22日(月)。アメリカ本土の東海岸から大陸を横断し、さらに太平洋の真ん中にあるハワイを訪れての初戦でしたが、ジョージ・ワシントン大(以下GW)はオハイオ大を77-49と一蹴しました。特に後半は相手を15得点に抑え、強力なディフェンス力をあらためて印象付けての進撃です。

渡邊選手はベンチスタートで14分間出場し、7得点と4リバウンドを記録。この日はスターターの上級生5人全員が28分以上コートに立ち、気分よくプレイしましたが、ほかに2桁の分数を得たのは渡邊選手だけでした。

翌日の準決勝で戦う相手はコロラド大。GWがホームで12日前に13点差(81-68)をつけて破ったディポール大との1回戦を、似たようなスコア(82-68)で勝ち上がったチームで、この時点で7勝3敗とまずまずの成績で進んできています。オハイオ大戦の勝利で同じく7勝3敗のGWとの対戦は、かなり白熱しそうな気配がありました。

結果は…53-50というロースコアの展開で、GWが勝利をモノにしました。この試合も、GWはディフェンスで勝利を呼び込んだといえます。コロラド大のフィールドゴール成功率は36.5%で、これはこのシーズンのコロラド大として2番目に低い数字。また、GWは相手から14本のターンオーバー(シュートに至る前のミスによりボールを失うこと)を誘発させ、その14度の攻撃機会で15得点を奪っていました。

特に後半10分を過ぎてからの戦いぶりは、シーズンの序盤に強豪相手に善戦しながら勝ちきれなかった経験が生きたように思えます。その時点で35-40と5点差を追いかける立場にあったGWは渡邊選手のスリーで追撃。その後シーソーの展開が続いた後、4本連続で相手のターンオーバーを誘発させ46-45と逆転に成功します。残り3分を切り、GWは一時48-49とリードを奪い返されましたが、今度はプレッシャーがかかるフリースローを5本連続で成功させるしぶとさを発揮。相手にフィールドゴールを1本も許さず53-50で勝利を手にしました。

 この試合でも、勝利の鍵として渡邊選手の活躍に触れることができます。ベンチスタートだった渡邊選手は、激戦の中26分出場して10得点(ジョー・マクドナルドの14得点、ジョン・コプリバの11得点に次ぐチーム3位)、6リバウンド、2スティール。前述の追撃弾を含め、シックススマンとして存在感を示しました。

GW自体もフィールドゴール成功率が38.6%と低迷したこの試合を、マイク・ロネガンHCは「ugly game(カッコ悪い戦いぶり)」と形容しました。しかしどんな形であれ、いよいよダイヤモンドヘッド・クラシックの決勝戦までたどり着いたGW。相手は準決勝で地元ハワイ大を延長の末下したウィチタ州大です。描いた通りの筋書きで、物語が展開されて行くような感覚に当時包まれたことを思い出します。

ちなみに当時全米ランキング11位だったウィチタ州大はどんなチームかというと…

 

ウィチタ州大の近年の成績:

2012-13… NCAAトーナメントでファイナル・フォーに進出(シーズン通算30勝9敗)

 

2013-14… 開幕35連勝でNCAAトーナメントのベスト32進出(シーズン通算35勝1敗)

 

2014-15… ダイヤモンドヘッド・クラシック決勝前時点で10勝1敗(最終的にNCAAトーナメントのスウィート16に進出し、シーズン通算30勝4敗)

 

また、このチームには後にNBA入りを果たすロン・ベイカー(現ニューヨーク・ニックス)、フレッド・ヴァンヴリート(現トロント・ラプターズ)がいました。

 

シーズン3試合目では、全米ランク9位のバージニア大に対して前半リードを奪いながら、後半は“パックライン”と呼ばれるシステマティックなディフェンスを攻めあぐみ、淡白なオフェンスを繰り返して金星を逃しました。5試合目のシートンホール大戦では、最後の1チャンスを逃し僅差で敗れました。しかしコロラド大相手の準決勝では、辛抱強く戦い勝利を手にしています。

はたして格上の強豪相手に、自らの成長を証明できるか…。勝てば歴史を刻むことになります。その舞台は整いました。(Part6へ続く

 

 ジョージ・ワシントン大コロニアルズ公式ページリンク

対コロラド大戦詳細

対オハイオ大戦詳細

Takeshi Shibata

O-Media/Ocean Basketball Club