#CHOSEN_ONE 渡邊雄太の4年間

PART 10 SEVEN THREEZ


Photos courtesy of George Washington University Athletic Department     

渡邊選手がスターターに名を連ねるようになった2014年2月18日の対デビッドソン大戦前までで、ジョージ・ワシントン大(以下GW)はシーズン通算17勝8敗、アトランティック10カンファレンス(以下A10)7勝5敗でした。そして、さらにデビッドソン大とリッチモンド大に2つ黒星を喫した後、NCAAトーナメントへの出場権が得られるかどうかのギリギリのラインに位置していました。

毎年3月半ばに開催されるA10チャンピオンシップで優勝すれば、カンファレンスの王者としてオートマティック・ビッド(自動的出場権)が得られるわけですが、ここまでの戦況から、その道は容易ではないことが明らかです。ただしそのほかに、NCAAのトーナメント招待チーム選考委員会の推薦枠があります。

ギリギリというのは、この推薦枠に値する評価を得られるかどうかのボーダーライン上だという意味です。 

この選考委員会が開催される“セレクション・サンデー(毎年3月半ばの日曜日に行われるためこう呼ばれ、この年は3月15日)まで1ヵ月を切っており、GWが滑り込むには、状況を一変させる快進撃が必要不可欠と思われました。端的に言えば、A10のチャンピオンシップで、せめて決勝に駒を進めるくらいでなければ、シーズン半ばの低迷分を取り返すのは厳しいだろうというのが、当時持っていた感触でした。

渡邊選手個人は、1月10日の対ラサーレ大戦で12得点を記録して以来2桁得点がなく、数字的にもどかしい日々だったかもしれません。そしてGWにとっての“運命の日”であるセレクション・サンデーも刻一刻と近づいていました。

しかし、チームが2月25日の対セント・ボナベンチャー大戦で5試合ぶりに69-46で勝利をつかみ、徐々に立ち直りはじめる過程で、渡邊選手も待ちに待った大爆発を見せます。それはA10レギュラーシーズン最終戦、3月7日の対マサチューセッツ大戦でのことでした。


2015年3月7日の対マサチューセッツ大戦でのひとコマ。有利な展開に渡邊選手も笑顔に
2015年3月7日の対マサチューセッツ大戦でのひとコマ。有利な展開に渡邊選手も笑顔に

Photo courtesy of George Washington University Athletic Department     

渡邊選手はこの試合で、その時点での自己最高となる21得点(4リバウンド)で、87-65の快勝に大きく貢献したのです。21得点はすべてがスリーによる得点で、放ったシュート10本もすべてスリー。つまりスリーを70%の高率で成功させた圧巻の活躍ぶりでした。この1試合7本のスリー成功は、GWの歴代最多(8本)にあと1本と迫る好記録。そして最終的に渡邊選手自身の4年間のカレッジキャリアにおける最多記録となりました。ボストングローブのウェブサイトには、この試合後に渡邊選手が語った次のようなコメントも紹介されています――「I was having bad games the last few games… But I’m coming in and shooting every day… The first shot was terrible, but the second shot felt good, so I just kept shooting(ここ数試合できがよくありませんでした。でも毎日打ち続けていますから…。最初のショットはダメでしたが、2本目は良かったので、打ち続けました)」

この活躍は、その後3月11日(GWの初戦は12日)から始まるA10チャンピオンシップに向け、チームの士気を高める一つの要素だったにちがいありません。GWはレギュラーシーズン最後の4試合を3勝1敗としてカンファレンス・ゲームを10勝8敗と勝ち越すと同時に、A10チャンピオンシップの第6シードを手にすることができました。また、同チャンピオンシップを前にシーズン通算で勝利数を21に伸ばした(11敗)ことで、NCAAトーナメントとほぼ同時期に開催されるもう一つのビッグイベント、NIT(National Invitational Tournament)への出場は、かなり近づいたと思われました。

渡邊選手は2014年末にA10週間最優秀新人賞を受賞しました(PART8参照)が、このシーズン終盤の価値ある活躍も高く評価され、レギュラーシーズン最終週にも、2度目の受賞を果たしています(PART11に続く)。

 

Takeshi Shibata

O-Media/Ocean Basketball Club

 

<関連リンク>

対マサチューセッツ大戦リキャップ(GW公式サイト)

NBC Sportsの対マサチューセッツ大戦ハイライト映像

A10公式サイトの週間アワード発表記事